ワインと農に魅せられ、自然に囲まれた小諸の地で、

ブドウづくり、ワインづくりへ情熱を注ぐ生産者がいます。

その想いを、自身もワインづくりに取り組む

小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春がお届けします。

 


#02 Grain Mûr

 

―日本では珍しい品種『シャスラ』

 

川口:チーズ料理によくあうシャスラは普段からスイスではたくさん飲まれています。

ほとんどがスイス国内で消費されてしまうので輸出量が少なく日本ではあまり出回っていません。

日本での知名度が高くないというのもありますけど。

スイスとドイツから輸入して来年の春植える予定です。苗木の輸入が一年くらい遅れていて大変でしたね。

 

武藤:なぜ輸入が難しいのですか?

 

川口: 日本だと、一人当たりの輸入本数が少なすぎるんです。しかも農林水産省の試験場で栽培して細菌の検査があるんです。

感染していると、焼却処分になります。半分くらいはだめになっちゃうのかな。

そんな少量だと商売にならないから海外のひとが輸出してくれないんです。

スイスから日本に帰ってきた人たちは、シャスラって聞くとすごく喜ぶと思います。

 

武藤:なんでシャスラを植えようと思ったんですか?

 

川口:目的は和食に合わせることです。初めてシャスラを飲んだ時、これはすしとかに合うなって思いました。

最初は甲州が一番和食にあうと思っていたので、甲州も植えたのですがシャスラを見つけたので

今後は接ぎ木するつもりです。

 

武藤:接ぎ木もご自分でやられるんですか?

 

川口:成功率は高くないんだけどやります(笑)

6月くらいにシャスラの芽が伸びてくるのでそれを切って接ぎ木していくんです。

 

―小諸でのブドウ栽培

武藤:ここの畑はどのくらいの大きさですか?

 

川口:ここは5反分(5000㎡)弱です。

 

武藤:おひとりでやられているんですか?

 

川口:そうですね。ほぼ一人でやっています。

 

武藤:大きな岩がゴロゴロしていてすごいですね。

 

川口:そうですね。ここは特に岩が多いんです。

昔、浅間山の手前にあった山が崩れてこんなに岩が多いみたいです。

弘法大使の草庵がまさにここにあって、五輪塔群があって

小諸市の史跡にも認定されています。まだまだ岩は出てきます。前ここの畑をやっていた人はあきらめちゃったみたいです。

 

武藤:ここは耕作放棄地だったでことですよね。

 

川口:そうですね。整地は業者にお願いしたんですけど、、竹とか、木がだいぶすごかったです。

 

武藤:最初から小諸でワイン用ブドウの栽培をしようと思っていたんですか?

 

川口:東御のアルカンヴィーニュに通っていたので小諸と東御と上田を回ったんですけど、

東御とかはもういっぱいで。あと、小諸市役所の農林課がやさしかったのもありますね。

小諸は東京も軽井沢も近いのでマーケティングの面でも良いと思っていたし、気候もちょうどよかったんですよね。

 

武藤:地元の北海道に戻って就農するとかは考えなかったんですか?

 

川口:北海道はほぼ半年雪に埋もれているし、大きな圃場を与えられちゃうので機械も必要になるんです。

小諸は仲間もいるから、栽培していてわかんないことがあれば聞けるから総合的に考えて小諸にしたんです。

ただ、海鮮とか生ものが大好きなんですけど、海がないのでたまに恋しくなりますね(笑)

 

―食事に合わせる

 

武藤:ワイン用ブドウの品種は食事に合わせて選んでいるんですか?

川口:そうですね。シャルドネもシャスラも食事に合わせています。

食べるのも飲むのも好きなので、魚介類に合わせてとか、

黒ブドウの畑はこってりした肉に合わせて、ボルドーワインを作っています。

去年は収量が倍になったんです。

武藤:気温が高かったからですか?

 

川口:いろんな要因があるんですが、ブドウの実が大きくなるときにちょうど雨が降ったからだと思います。

樹形も5年、6年で作るのが難しくて、理想の形に剪定して、整うのが今年くらいなんです。

いい実がなりそうな可能性のある木を残しつつ栽培をしていたので、新梢の数が多かったのもあると思います。

収量が多かった分味は落ちちゃうんですけどね。粒も大きくて。物はやっぱり去年のほうがよかったですね。

今年は、わずかですがシャスラもワインになる予定なのですが、非常に楽しみですね。

Grain Mûr(グラン・ミュール)川口 聖さん
〒384-0802 長野県小諸市乙656-2
info@grain-mur.com