- 農業の魅力は、モノづくりそのもの

新製品のBBQソースのデザインも自ら手がける

武藤 甘利さんはもともとデザイン系のお仕事されていて、そこから農業を始め、一番やりたくない職業だったという農家さんになっていますよね。そして、今やもうどっぷり農業にハマったわけじゃないですか。そのハマったきっかけ」は何かあったんですか?

甘利 一年ぐらいは、本当に「農業嫌い」っていう気持ちでやってたんですよ。笑 でも、農業が好きになったきっかけっていうのがあって。昔から、絵を描いたり、モノづくりが好きだったんです。絵も執筆も、自分が「おしまい」って筆を置くまで終わらない。言い換えれば、筆を置いたところが終わり。要は、自己満足の世界なんですよね。農業も一緒で、手をかければかけるほど終わりがないんですよ。そこが面白い。

武藤 確かに、そうですね。

甘利 そういうところが多分、自分の感覚と合致したんです。

武藤 それはすごいわかります。私も、やっぱり始めるまでは、農業って自分の生活からすごい遠いイメージがあって。でも、いろんなご縁があってやってみたら 「めちゃくちゃクリエイティブで楽しいじゃん」と。農家さんそれぞれ、そのひとにしかない哲学を持って、こんなにクリエイティブに取り組んでいるんだっていうのは、触れてみて気づいた驚きでした。

甘利 そういうところからですね。色々なひらめきとか、アイデアとか出てきて、「農業を楽しくできるようにするには、どうしたらいいかな」と考えるようになりました。

 

- 財産は、”土”

甘利 日々野菜をつくっているんですけど、あるとき「一番大事なのはそこじゃないな」って気づいたんです。僕、社員とかには「いま農業やってる中で、自分たちの財産ってなに?」って聞くんですけど、大体は「つくってる野菜じゃないですか」って答えてくれます。それが、お金に変わるわけなので。でも、僕は「それは違うぞ」って教えてるんですよ。

「自分たちの財産、商売道具って何?」っていったら、やっぱり”土”なんです。土があって、大地があって農業ができてるわけで、その大地があるおかげで野菜ができる。僕らは本当に、土を守ること、いい土づくりをすることが一番考えなきゃいけないと思っています。土づくりにすごい興味が出てきて、そうなってしまうと、もうそっちの方が奥が深すぎてドンドンいってしまう。あまりにもいき過ぎちゃうと、周りがついていけなくる。でも土の話になると、話が止まらなくなるんで、自分でブレーキかけなきゃいけない。自分でも困ってます笑

武藤 デザイン系の仕事と農業とは、両極端のように見えて、何か通ずるものというか、近いものを感じられたんですね。実は、一緒だったみたいな。

甘利 掘り下げていくと、モノづくりに対する考え方だとか、そういったものは一緒なんだなと。

- ”土づくり”へのこだわり

武藤 以前にも色々教えていただいたんですが、すごくないですかこれ。ぜひ、ちょっと一個一個教えていただけますか。

甘利 これは、自分たちが「土づくりにこれだけ気を遣っていますよ」、「こうやって土づくりをしてますよ」っていうのを分かってもらうためのサンプルです。土づくりは、堆肥づくり。土中の微生物の多様化によって、僕らの野菜が作られていると思っています。だから、微生物の環境を整えてあげる。

例えば、順番に説明すると…。こういった国産の「間伐材のチップ」、それを寝かせたものとかを入れます。

また、この「落ち葉」も土にいれます。森って、誰も肥料をやらないのに、どうしてどんどん育っていくのか考えたことありますか? 落ち葉を餌にする微生物とか虫が、この落ち葉を分解し、堆肥化してくれるんです。それが肥料になって、木が吸い込んでいくっていう自然の循環が起こっているんです。

それから、環境問題も考えて「野菜の食物残渣を堆肥化したもの」や、小諸の丸山珈琲さんからいただいている「コーヒー豆の皮」なんかも、発酵させて微生物の餌にしています。他にも、「国産の孟宗竹」。

武藤 これは竹の炭ですか?

甘利 その通りです。顕微鏡で炭を見ると、ものすごく小さい穴が開いているのがわかります。その穴が、微生物の住処になります。あとは地元でもらった「稲わら」です。これも、発酵させて土に還してあげる。これは、「カニガラ」。

武藤 かにがら?

甘利 はい。蟹の殻。これも微生物の餌になります。あとは、一番大事だと僕が思ってる「地元の腐葉土」。地元の腐葉土には、土着菌っていう、その地で何百年も何千年も生き続いてる菌がいます。土着菌の特徴は、地域によって異なると思うんですけど、小諸のこの土地で生き続けている土着菌っていうのは、すごく生命力が強く、この土地に合っている菌なので、畑の中に入れてあげれるような環境をつくっています。

武藤 すごい! 本当に、自然のなかにあるもので、アマリファームの土はつくられてるんですね。

甘利 なるべく国産のものを使います。あとは、 使う量にもすごい気を付けています。特にこういう竹の炭なんかは、「殺菌作用」があるので入れ過ぎは良くない。大事な菌が死んでしまいます。わらも注意が必要。わらは、昔のひとがわらじにしたり、屋根にしたりしていますよね。それは、腐りにくいから。土にいれても、なかなか腐りません。入れすぎると、こっちを腐らせるためばかりに肥料が使われてしまい、野菜の方には回らなくなってしまう。

こういうことがすごく面白いというか、やっぱり農業の原点だと思います。農業は、やっぱり継続させなきゃいけない産業だと思うんです。そのためには、土を守っていかなきゃいけない。特に小

諸は、すごく土壌が豊かで、いい野菜が取れるから。そういうところには、すごく気を配って農業をしているつもりです。

これ多分あと5時間は話せますね笑