ワインと農に魅せられ、自然に囲まれた小諸の地で、

ブドウづくり、ワインづくりへ情熱を注ぐ生産者がいます。

その想いを、自身もワインづくりに取り組む

小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春がお届けします。

 


#04 Mille Beauté

 

―始めたきっかけ

 

武藤:今日はよろしくお願いします。

早速ですが、小諸でワイン用ブドウの栽培を始めたきっかけを教えてください。

中根:もともと埼玉県で高校の教員をしていました。

景色がよくて涼しいところに住みたいという希望があり、2012年に小諸市に移住しました。

自宅は標高1000メートルのところにあります。

移住してから3年間は、職場の高校がある大宮まで新幹線通勤をしていました。一度きりの人生、ほかのこともやってみたいと思い、高校教師を早期退職して東御市のワイン学校アルカンヴィーニュに1期生として入学しました。

 

武藤:高校ではなんの教科を教えていたんですか?

 

中根:数学です。

 

武藤:数学は農業に活かされていますか?

 

中根:あんまりですね(笑)

 

武藤:ミリ・ボーテという名前の由来はなんですか?

 

中根:フランス語で「ミリ(millè)」は「千」、「ボーテ(beautè)は「美しさ」を意味する言葉です。「千」という言葉は数字の意味だけでなく、古くから数が多いことを表す言葉としても使われてきました。山々の間を縫うように美しく流れる千曲川や周囲に浅間山、八ヶ岳、北アルプス、富士山を望める美しい風景。そういった地域に広がる数多の美しさをワインを通して表現したいという思いが込められています。

―「美しい」ワインを目指して

 

中根:アルカンヴィーニュを卒業して、2016年に畑にブドウを定植しました。もともと遊休荒廃地だったところに重機をいれて開拓したんです。種類は4品種で、全部で2400本ほどあります。作業は収穫の時を除いてほとんど一人でやっています。畑として使われていたところよりも、荒れていて自然の落ち葉が入っただけのような圃場のほうが、肥料が入りすぎていなくてちょうどいいんです。何も作ってないくらいのほうがブドウにはよくて。生育の悪いところに馬糞の堆肥を入れたり、刻んだ藁を漉き込んだり。あとは自然の成り行きに任せています。

 

武藤:いろいろ実験とかしているのは感覚でやっているんですか。

 

中根:最初のころは成分の分析とかしていました。やっているうちに味も香りもいいワインができるようになってきました。肥料もそんなに必要ないです。あとは、品種ごとに選定と芽かき。ちょっとずつ変えて収量といいぶどうが取れるようにしています。収穫の時期を除いて、丸一日作業することはせず、こだわるところはこだわって、効率よく作業をしています。

 

武藤:まさに農ライフですね。

 

―今後目指すところ

 

中根:ワイナリーはやらないことに決めました。ショップを建設したので、ここで収穫のボランティアをしてくれた人をブドウ畑の景色を楽しんでもらっておもてなしできたらいいなと思っています。いいブドウを作って、いいワインを飲んだ人が喜んでくれればいいですね。

 

武藤:良いぶどう、いいワインとは。どんなものですか?

 

中根:飲んでみるとわかります。味も香りもそうだし、ブドウなりのワインになるんです。余計な手はかけずありのままのワインで醸造しています。

 

武藤:今年のワインも楽しみですね。