ワインと農に魅せられ、自然に囲まれた小諸の地で、

ブドウづくり、ワインづくりへ情熱を注ぐ生産者がいます。

その想いを、自身もワインづくりに取り組む

小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春がお届けします。

 


#05 農花

 

ー思い立ったら、、

武藤:もともと出身はどちらなんですか

 

岡本:東京です。

 

武藤:東京から「よし、ワイン造るぞ」って来たんですか

 

岡本:以前は雑誌の編集の仕事をしていました。

   早期退職して、2018年からブドウの栽培を始めました。だから今年で6年目ですね。

   もともと農的暮らしに憧れがあっていつかやってみたいと思っていたんです。

   家族はいるんですが、夫は適当な人で(笑)

   話したら「面白そう。やってみたら」って言われました。

   子供たちも学校があったので、一人で移住してきました。

   これを言うと結構驚かれますね。ときどき遊びにきて、手伝ってもらいます。

 

武藤:面白いスタイルですね。

 

岡本:いろいろ考えちゃうと、できない理由ばかりが思い浮かんじゃうので

   あまり考えずに行動することも多いです(笑)

 

武藤:ワイン造りはどこで学ばれたんですか?

 

岡本:雑誌の連載で日本ワインを取り上げたときに、監修していた方から

   アルカンヴィーニュを紹介していただいて興味を持ちました。

   2016年には仕事をやめて、アルカンヴィーニュに通ってワインづくりを学びました。

   移住をする以前から長野県の東信エリアは好きだったんです。浅間山も魅力的で。

   それで「よし、やろう」って結構軽い気持ちで始めたんですよ。

 

武藤:その時はもう、こっちに住んでいたんですか?

 

岡本:話せば長くなるんですが、、、

   東京からアルカンヴィーニュに通っていたんですが、2期生の中に

   何人か、東京から来てる人がいて。節約のために、車に乗り合わせで行ったり。

   ワインの研修していると安く泊まれるコテージがあるので、みんなでそこを

   借りて、泊まっていました。授業を受けて、夜はワイン会をして。

   そんなことを1年もやっていました。だんだんと家族みたいになってきて。

 

武藤:楽しそうですね。

 

岡本:畑を探していたときに、最初に糠地に来て気に入って。

   家とか畑とか見つかるまでに2年間かかりました。

 

武藤:隣の東御市にしようってなりませんでしたか?

 

岡本:なりました。でも第一希望が糠地だったから。 

   みつかるまでの間に造園の職業訓練校に通ったりもしました。

   圃場をつくったり、家を修理したり、役に立っています。

 

武藤:ほんとすごいですね。

 

岡本:今まで編集の仕事しかしたことがなかったので、農作業とかも全く分からなかったし。

   草がこんなに生えてくるなんて知らなかったです。刈払い機の使い方から勉強しましたね。

 

武藤:そうですよね。草って一瞬で生えてきますよね(笑)

 

ーフィールドブレンド

武藤:畑にはどんなブドウが植わっているんですか?

 

岡本:畑には、自分が興味のある品種のブドウをたくさん植えました。

   シャルドネ、ミューラートュルガウ、ソービニヨンブラン、ケルナー、バッカスなど。

   移住してきた当時は、寒冷な土地だといわれていたので寒いところにあう品種が多いです。

   あとは、自分が白ワインが好きなので白が多いですね。

 

武藤:6年前で寒冷だったんですか?

 

岡本:そうですね。数年でだいぶ変わった気がします。

   夏が暑すぎるので。

 

武藤:実は、私もバッカス植えてます!小諸で初めてなんじゃないって言いながら植えました(笑)

 

岡本:バッカスを植えている人私以外で小諸で初めて見ました!

   なんか、ジャケ買いじゃないですけど名前が好きなんですよね(笑)

 

武藤いろんな品種を植えてみて、なんとなくこんな感じにしようっていうイメージはあったんですか?

 

岡本こういうワインにしようっていうなのはなくて、ふくよかな白がいいなって思っていました。

   一つ一つの品種だと収量が足りないので、単一品種で仕込めないんです。

   醸造はテールドシエルの桒原さんにお願いしています。

   単一品種で仕込めないからどうしようって桒原さんに相談したら

  「全部一緒に仕込めばいいんですよ。面白いじゃないですか。」って言われて。まさに目から鱗でした。

  フィールドブレンドは、熟度も異なるいろんな品種のブドウを混醸することで味に複雑さが生まれるんです。

 

武藤:私も白と赤を3種類ずつ、2反分(2000㎡)の中に植えてます。

 

岡本:なんか似てますね。畑の大きさとか本数とか。

 

武藤:ブドウの栽培を始めるまで、ワインについてまったく知らなかったんですよね。

   赤と白があることくらいしか知らなかった。でも、岡本さんのワイン造りはまさに自分がやりたい形です。

   始めたころと今の違いって何かありますか?

 

岡本:一番最初のワインは丁寧にじっくり仕込みました。

   なかなか発酵が始まらなくて、補糖はしたくなかったので後からとれた赤を入れましたんです。面白いなって思って。

   そうしてたまたま、ピンク色で泡のペティアンができました。

   最初は、”とりあえず走ってみる”という感じで闇雲にやっていたんですが、今改めて勉強をしなおしています。

   去年くらいから意識的に先のことを想定して作るようになりました。

   今の時代は自由な発想でやってみても全部面白いってなるからいいですよね。

   いい出会いがあって、いい形のワインになっているんです。

 

武藤:まさに農ライフですね。ワインやるって結構勝負じゃないですか。売れるものを作らなきゃって。

   ”業”になりがちですよね。でも、暮らしの中にワインがあって、造園とか絵をかいたりとか。

 

岡本:去年のクリスマスには剪定したブドウの枝でリースも作って。

   そういうのがやりたかったんです。まさに武藤さんのおっしゃる通りで

   業じゃないですよね確かに。趣味でやってるんでしょって言われちゃうかもだけど、

   ただ、趣味っていうとちょっと違う。生活なんですよね。

 

 

農花

岡本なるみさん