ワインと農に魅せられ、自然に囲まれた小諸の地で、

ブドウづくり、ワインづくりへ情熱を注ぐ生産者がいます。

その想いを、自身もワインづくりに取り組む

小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春がお届けします。

 


#10 GIÓ HILLS 

ー風吹く丘のジオヒルズワイナリー

武藤:ジオヒルズワイナリーは何年目になりますか?

富岡:5年目ですね、ブドウは今年22年目です。父の代にマンズワインの契約栽培農家として定植したのが始まりです。現在でもワイン用ブドウのプログラムとかで、また新しく植えています。自社栽培にこだわらず、契約農家さんに作ってもらう部分もあり、うちでできないような品種を作ってもらったりしています。普段は父と自分を中心に経営をしています。

武藤ワインのコンクールでも受賞をしていますよね。

富岡:契約農家さんにも喜んでいただけますし、励みにもなるのでいいのかなって思っています。

武藤:毎年ラベルやコンセプトが変わっていて、すごいですよね。

富岡:自社のワインのラベルはアート性を持たせたり、人気のカム・オンシリーズはベトナム語で”ありがとう”という意味なんですが、ワインは一人で作れるものじゃないので、ベトナムの友人や契約農家さんなどに感謝の意を込めて名付けました。ジオヒルズのワインはまだまだ探っている状態です。毎年テーマを定めて、作っています。

武藤:体験プログラムなども実施していて、他のワイナリーとファンづくりの角度が違うなという風に思っているのですが、具体的にどのようなプログラムを実施しているんですか?

:体験自体は兄が中心にやっているのですが、みんなで協力しながら、子どもたちに体験してもらえればと思っています。ブドウの収穫とか、定植だけでなく、タンクの掃除まで体験してもらうことで、意識も変わるのかなって思います。

武藤:サポーターという制度もあるとお伺いしたのですが、具体的にはどういったことをやっているんですか?

富岡:サポーターは今200人くらいいます。もちろん小諸じゃないところにも。ほとんど旅館の方のリピーターさん。純粋に応援してくださる方。

武藤:どんなワインを作っていきたいですか?

富岡:一年に一回しか作れないので、なんでも作ってみたいです。賞を受賞したときは180°作り方を変えたときだったんです。評価してもらってよかったです。可能性も広がりました。いろんな作りを試して、深めていきたいです。

武藤:こういう風に作るってあらかじめ決めていらっしゃるんですか?

富岡:決めている部分もあります。作った過程と結果をみてどうするか考えています。ワインも変わっていくこともあるので、何がいいか探っていかないとですね。出来上がったワインを自分で飲んでみて、納得してから提供するようにしています。最近のテーマは香りを意識してい作っていますが、今年は暑すぎましたね。発酵させるときも温度低くしてゆっくり熟成させたかった。極端に人の手を入れずに自然にするのもいいかなって。

武藤:どういったところにワインづくりの楽しさを感じますか?

富岡:数値をみたり、分析をしたりして、自分で栽培したブドウと契約農家さんのブドウを比べてみたり、それぞれのコンセプトの違いを見るのが楽しいです。契約農家さんにはそれぞれ好きに作ってもらってます。2年目に雹害があって、ほとんどブドウが採れなかったときに、契約農家さんに助けてもらったこともあります。ブドウをいい状態でもってきてくれるから、、その特徴をどう生かすか毎年試行錯誤しながら、ワインづくりをしています。どういうワインを作りたいのか、逆算していくと、どういうブドウが作りたいのかということになります。ワインを通じて、自分で表現できるのがこの仕事の魅力だと感じています。

ーワイン文化を未来へ繋ぐ会

富岡:2021年から「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」というものを発足しました。地元の小学生と高校生たちに定期的に畑に来てもらって、栽培管理・収穫、ラベルデザインまで携わって、体験をしてもらうプログラムです。ラベルのデザインに関してはプロのデザイナーを講師に招いて、学んでもらってます。高校生には、「自分が好きな絵をかいても売れるとは限らないし、中身の見えないワインをぱっと見で買ってもらえるようなラベルって何か」という話をしたり、価格の設定まで経験してもらうことで、マーケティングの勉強にもなるかなって思っています。小学生には、瓶詰されたワインしか想像できなかったところから、ブドウの栽培から関わってもらうことで農業という意識をもってもただ、定植や収穫だけの体験で終わりではなく、ワインを通して様々な経験を積んでもらえたらうれしいです。ワイン産業は一代でできる産業ではないので、次世代の記憶にも残るためには経験して考えることが大切かなって思います。

武藤:今後、どんな風に次世代に繋いでいきたいですか?

富岡:農業ってきついイメージがあると思うんです。でも実際楽しいし。農業っていう一次産業、醸造っていう二次産業、レストランでの販売・提供っていう三次産業いろんな分野がかかわっているんです。このそれぞれの分野ごとに責任者がいて、いつか一つのチームとして、会社として、自分の個性や強みをいかして、成り立っていければいいなって思います。未来のために、種を蒔くだけ蒔いて、それがどう成長していくかは子どもたち次第なんですけど、未来につながっていくきっかけになれば嬉しいです。