小諸オモシロ農家

10人いれば10通りの農とのかかわり方があります。

小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春が、この地で農を営む

オモシロ農家の生き生きとした活力溢れる農ライフをお届け。

 


 

今回のオモシロ農家 #01   宮嶋伸光さん

 

 

 

―宮嶋林檎園はどんな林檎園?

 

宮嶋 俺の場合は親父から引き継いで農業を始めたんだけど、ずっと親父がこだわってやってきたことっていうのを引き継いでやってるのがすごく大きくて。うちは「御牧ヶ原」っていう粘土地帯の場所をメインでやってるんだけど、粘土地帯とそうじゃないところ、両方やってみると明らかに味が違うっていうことに気付く。

じゃあ何が違うかっていうと、土の中に含まれている成分だったり、微生物だったり、栄養素だったり、いろんなものがあるんだけど、やっぱりりんごに合ってるのは、粘土地帯なんだよね。

とはいっても、その粘土地帯で栽培するってなるとすごい難しい部分が多くて。例えば、水はけが悪かったり、土が耕しずらかったり、いろんな超えなきゃいけない壁はあるんだけど、それを乗り越えると粘土地帯で作ったものの方が圧倒的に味が良くなる。そういうことをずっと親父も探求してて、

「美味しいりんごを作るためにはどうしたらいいか?」っていう探求を、俺たち兄弟は引き継いでやってる。

発信の仕方としては、「ここが他と違いますよ」って自分たちからお客さんに発信はしていなくて、どっちかっていうとお客さんに食べてもらって「ここのりんごは美味しい」と感じてもらえたらなと。そういう見えない努力だったりとか、普段やってることをなんとなくお客さんが食べた時に気がついてくれるというか。

 

武藤 それをお客さんに味で感じてもらえるって、凄いですよね。

 

宮嶋 そうだね。どういうりんごを作りたいかっていうコンセプトも実はしっかりあって、香りが強いりんごを作りたいんだよね。切った時に、部屋中香りが広がるような。ほら、香りって ひとに印象残すじゃん? 例えば、「昔好きだったあの人が…」とか「こんな香水使ってたな」とかっていうのって、意外と同じ香りを嗅いだ時に思い出したりとかするじゃん?

それと同じように、りんごも香りが強いとやっぱりまた翌年食べたいなってきっと思ってもらえる。そうやって、香りが想いに繋がっていくと思うんだよね。

 

武藤 面白い。みんな結構、味を追求しがちな気がしますよね。

 

宮嶋 そう。俺は香りを追求したいなって思ってる。

 

武藤 それはりんごもそうだし、ジュースとかも?

 

宮嶋 ジュースもハードサイダー(りんごのお酒)も、やっぱり香りはすごく意識するね。

 

― 横のつながりが次のヒントに繋がる

 

武藤 他のりんご園でも、宮嶋さんたちのようにご両親から継いでいる人って多いと思うんですけど、宮嶋さんは実家がりんご農家だったとか関係なく、もの凄くりんご栽培にどっぷりハマってるじゃないですか。そのハマるきっかけはあったんですか?

 

宮嶋 なんだったかな。もともとこの地域って、りんごの生産者って少なくて、後継者も少なくて。小諸市は長野県内の他のりんごの産地と比べると、そんなに有名な地域じゃないんだよね。だから、あんまり身近に仲間がいなかったんだけど、

地元で横の繋がりがなかったから、長野県全体でりんご農家が集まってる組織に足を踏み入れてみたんだよね。そういう場所で俺と同じような若手の農家たちと交流したことで、この世界にどっぷりハマっていった。それがきっかけだったかな。やっぱり同世代で同じことをしている人たちがいるっていうのは、すごい刺激になったね。

 

武藤 同世代の農家さんたちと交流していく中で、どんなところが面白いと感じましたか?

 

宮嶋 やっぱり「交流したい!」「刺激が欲しい!」っていう前のめりな人たちばっかり集まってくるんだよね。ただ単に親から引き継いでやってるとか、食ってくための仕事っていう認識で「農業は大変だ」と思ってる人たちって、そういうところにあんまり出てこないんじゃないかな。前のめりな人たちとの出会いは、ほんとに面白いよ。

 

武藤 実は、農家さんって物凄い探究心を持ってたり、アクティブな人がめちゃくちゃ多いですよね。

 

宮嶋 そうだね。やっぱり日々いろんなことが起こる畑の中で、知らなかったことを色々経験すると、そこで湧いた疑問を解決したくて。農家さんたちと交流するとやっぱり色んな意見があるんだけど、その意見が親から言われてたことと違ったりとかすると「お、こういうの試してみよう」となってくる。

 

武藤 本とか教科書にも色んな情報や意見がたくさん載ってるかもしれないけど、やっぱり人が実際に畑に入って感じた、生の声を聞くのが一番面白いですよね。

 

宮嶋 そうそう。やっぱりみんなが実際に体験してることの方が試す価値があったり、多分そこに答えがあるのかなと思ったりもする。